
製品・サービス開発の戦略
中小企業の製品・サービス開発は、経営者ひとりのセンスに依存していることが多い。専門の組織が存在しても投資承認の段階で経営者の「意向」に沿ってしまう。経営者のみなさんが組織の議論をリードして客観的な判断をするためにも製品・サービス開発に必要な要素を正しく理解し、自社が注力すべき戦略ポイントを絞っていただきたい。
まず基礎知識として製品・サービスを分類してみる。製品・サービスは、次の三つの観点から分類することができる。
(1)耐久性と有形性による全体の分類。
「非耐久財」「耐久財」「サービス」
(2)購買習慣による消費財(消費者が買い求める製品・サービス)の分類
「最寄品」(頻繁に、即座に、最小限の努力で購入するもの)
「買回品」(購入過程で特性を良く比較検討するもの)
(3)製造工程への組み入れによる生産財の分類「材料・部品」(製品・サービスの一部になる天然物、加工物)「資本財」(建物、固定設備という装置/工作機械、工具、事務設備という付帯設備)「備品・対
事務所サービス」(寿命の短い物品/清掃・修理・コンサルティングなど)
顧客価値の視点から製品・サービスの価値レベルは五つの階層(ヒエラルキー)に分けられる。最も基本的な「中核ベネフィット」から、「基本製品」「期待製品」「膨張製品」「潜在製品」という順でレベルが上がっていく。
「中核ベネフィット」とは、顧客が実質的に手に入れる最低限の結果のことで、レストランなら空腹を満たすこと、ボールペンなら文字や図を描くことを手に入れているといえる。「基本製品」レ
ベルで考えると、レストランはテーブル、ナプキン、洗面所などを備える。
「期待製品」レベルとは購買者が通常期待するレベルであり、レストランの場合は清潔なテーブルクロスや注文を間違えずに食事を出すことなどだ。「膨張製品」とは購買者の期待を超えることで、提供者は消費システム全体に目を向けねばならない。「潜在製品」レベルとは、将来の可能性に焦点をあてるレベルである。将来も顧客が満足し続けるため、膨張や転換を含むあらゆる方法を模索する。
提供する製品・サービスを企画する際には、市場の成熟度すなわち競合状態と自社の位置づけを鑑みた上で、どの階層(ヒエラルキー)レベルで企画すべきか、を意識しなければならない。
製品開発のポイントには、製品そのものに関する、 (1)形態、 (2)特徴、 (3)性能品質、 (4)適合品質、 (5)耐久性、 (6)信頼性、 (7)修理可能性、 (8)デザイン、の八つと、付帯サービスに関する、 (9)注文(10)配達(11)取り付け、 (12)顧客トレーニング(13)顧客コンサルティング、 (14)メンテナンスと修理、の六つ、さらに、 (15)パッケージとラベリング、という合計一五のポイントがある。これらのうち、どれが自社の新製品を競合製品と差別化してくれるのか、どのポイントに注力したら顧客ニーズに応えられるのか、を検討する。
【製品そのもの】
(1)形態
大きさ、形状、物理的な構造の ことで、たとえば、薬品を飲み薬にするのか錠剤にするのか、顆粒にするのかというようなこと。
(2)特徴
製品の基本的な機能を補う周辺機能のことを言う。ハンドソープに付いている香りや、使いやすい容器なども含まれる。
(3)性能品質
製品の基本機能のレベルを言う。燃費の良さが売りの自動車において燃費を業界最高に改善するというケースがあてはまる。
(4)適合品質
生産された製品すべてが約束された仕様を、等しく高いレベルで満たすことによる信頼感のことである。たとえばポルシェの加速性能などがこれにあたる。
(5)耐久性
当該製品が機能する耐用期間のこと。
(6)信頼性
製品の性能維持が長期にわたって見込まれる度合い。
(7)修理可能性
製品性能が維持できなくなったときの修理のしやすさ。
(8)デザイン
製品の外観および製品機能に影響を及ぼす特徴のまとまりのこと。
【付帯サービス】
(9)注文の容易さ
注文手順が簡単だということに加え、習慣に合っていることも重要。
(10)配達
配達のスピード、正確さ、配慮など。
(11)取り付け
予定された場所で製品が稼働できるようにする作業。
(12)顧客トレーニング
購入製品の使用方法をトレーニングする仕組みのこと。
(13)顧客コンサルティング
顧客に提供されるデータ、アドバイスなどのこと。
(14)メンテナンスと修理
製品を良好な状態に保つための行為。
(15)パッケージやラベリング
パッケージやラベリングは、ブランドを印象づけ、わかりやすく説得力のある情報を伝え、製品・サービスの輸送や保護を助け、活用現場での保管を容易にし、場合によっては製品・サービスの消費を促進する。
パラスマン、ザイタムル、ベリーが『マーケティング・ジャーナル(1985年)』で述べたサービス品質を決定する五つの要因は下記の通りだ。
(1)信頼性 …約束したサービスを確実かつ正確に行う能力。
(2)対応力 …顧客の役に立ち、迅速な対応をしようという気持ち。
(3)安心感 …従業員の知識や礼儀、そして信頼と安心を与える能力。
(4)感情移入 …顧客一人一人に対する従業員の気遣い。
(5)有形物 …施設、設備、従業員、コミュニケーション資料など、形あるものの印象。「上記を勘案してサービスが企画設計されたか」「正しく顧客に伝わっているか」「従業員トレーニングは充分か」「仕組み化はできているか」「組織に定着しているか」をチェックする。
また、サービスの提供に失敗する原因となる五つのギャップとは下記の通りだ。
(1)消費者の期待⇔ 経営陣の知覚
ホテル経営者は「寝心地の良いベッド」が期待されていると思っていたが、宿泊者は「スタッフの対応が良いか?」に関心がある、など。
(2)経営陣の知覚⇔ サービス品質仕様
ホテルの経営者は「スタッフの対応」が重要と知覚しているが、「良い対応をしろ!」とだけ言って、具体的な方法の指示をしない、など。
(3)サービス品質の仕様⇔ サービス提供方法
「スタッフの対応が良い」サービス提供を目指すホテルにおいて、スタッフへの訓練が不十分で適切な言葉遣いさえできない、など。
(4)サービス提供方法⇔エクスターナル(外部)・コミュニケーション
ホームページやパンフレットに掲載されているスタッフは笑顔でいっぱいなのに、現実は全く違っている、など。
(5)知覚サービス⇔期待サービス
ホテルにおいて宿泊者は、スタッフに期待する良い対応として「必要な時は自分から問いかけるので、そのときだけ適切な回答がほしい」と思っているのに、スタッフは良い対応をしようと宿泊者に頻繁に話しかける、など。
供給者視点からの観察のみでは上記のギャップを見落としてしまうことが多い。ギャップの定期的な測定と客観的な評価、それによる業務の継続的な改善が必要である。